それはある日、ダンスのレッスンを終えアイドルたちを帰した後、レッスンスタジオのメンテナンスをしていたときの出来事……
「よっと。ベテ子さん、ステップ台のクリーニング終わりましたよ。次は何をすればいいですか?」
「ベテ子さん」……一人ひとりの体格、体力のデータや性格に基づいてベストなレッスンプランをつくり丁寧に指導していく彼女は、アイドルたちから信頼され、親しみをこめて「ベテ子」つまりベテラントレーナーとあだ名で呼ばれていた。俺は、彼女のレッスンを受けはじめたアイドルたちの上達スピードが、目に見えて速くなっているのを目の当たりにしている。俺も彼女に全幅の信頼をおいていた。最近は、経費削減とかで、施設のメンテナンスもトレーナーたちが交代でやっているらしい。いつの間にか、俺は、後に予定が入っていないときにベテ子さんを手伝うようになっていた。